ありここコラム #14  ~ 壺山順世 さん ~

人生の半分は旅

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先日、久し振りにつぼみちゃんと再会した。
何をするのも楽し くって、バツグンのセンスと器用さを持つカラフルな女の子は、
この数年で、どこか九州のお母さんのような、どんと構えたところを感じさせる程、成長していた。

私は、彼女が会話の中でよく使う「世界観」という言葉が好きだ。
言葉どおりの「世界=ワールドワイド」、そして個々人の持つ「世界=オリジナリティ」。
そして、それらを捉える「観=目、価値観」。

誰の価値観がいい訳でもなく、悪い訳でもなく、その人らしくあることを尊重する。
沢山の経験を重ねてきた彼女から発せられるこの言葉が、彼女を体現していると思う。

つぼみの原稿は、校正が入らなかった。
「世界観」そのままだったからだ。

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名前: 壺山順世
年齢: 1982年生まれ 33歳
出身: 福岡
職業: ヨガスタジオ「東中野、ヨガの部屋。」主宰・クラシックバレエ講師・マリールーキャンドル運営 

Q1: 現在の生活にいたるまでの経緯は?

高校卒業後フランスへ渡り、バレエ留学生活を2年間送りました。
思い返してみるとバレエトランスとも言えそうなほどの高揚と集中の毎日。 とても幸運な経験でした。

あの頃の、師の言葉や厳しさ、その奥の愛情、達成の喜び、空気の香りや色彩は私の中で強く生きていて
今でもそのフィルターを1回通して物事を捉えることも多いです。
この特別な日々は、今に至る私の大きな核の一つです。

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2002年帰国後には東京でバレエダンサーとしての生活が始まりました。
先生方や多くの先輩・仲間と沢山の舞台経験に恵まれた日々でしたがスケジュールが充実するに比例して身体が疲弊していくというのも確かで、気付くといつもどこかに痛みを感じるように。
でもその頃は「どんどん行くぞー!」と外にばかり意識を向けていた状態で、大体の痛みは気合いで乗りきれると過信もしていたし、痛みがよほど酷くならなければ治療にも行かなかったりと 、体や心の言い分に耳を傾けることを殆どしていませんでした。

「抜く」という感覚に疎くて自分のコントロールの方法が上手でなかったのです。
でもそれはきっかけになりました。

やっぱり身体は素直な訳で。
蓄積はきちんと記憶されている訳で。

ひずみの蓄積はいずれ錆び付きになり、錆び付きは身体の違和感となります。
身体がスムーズにまわらなければ、心も同じように重たい。
心が重たいと景色がうまく見えなくて、見ている世界が霞んでいると自分から出て来る表現もなんだか爽やかじゃない。
そんなスパイラルの中をぐるぐるしながら目が回りそうな何周目かに、
うう・・もう・・カオス!
とスピードを落とさずにはいられなくなり、一旦歩を止めてみたことがあるのです。
gazou 332でもその時に、あれ…これはもしかして自分自身でぐるぐるしてただけじゃないの…と気が付きました。
今から振り返ると、単純な事なのになぁと思うけど、
その時は外から中ではなく中からひたすら外ばかりを見ていたから、本当に気が付かなくて。
でも結局それもありがたい遠回りでした。

もう少し自分とも会話しようと決めた時に、すぐ掴める場所にあったのがヨガの袖口だったのです。
ハードな動きで酷使する身体に対して「ゆるめる」「整える」時間を作るために最適でした。
稽古やリハーサルのないときにはヨガに通って、続けてゆく中で筋肉や関節は動きやすい状態に変化したし、実際ケガも減りました。
更には、フィジカル面よりも大きな影響を感じたのがメンタル面。
この感覚には目から鱗でした。

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ゆるめるポーズをただ綺麗にとったところで、ゆるめようとする心の状態でなければ、結局は何もゆるまない。
「からだと心って繋がってるんだなあ」とやっと気付いたのがその頃で、
まさに心身ともに「抜く」ことを理解し始めたタイミングだったと思います。

ヨガと言うとポーズのイメージがとても大きいけど、実はそれ以前にヨガ哲学 (例えば「自分ときちんと向き合う」「つながりを大切にする。」「身近な物事にしっかり目を向けて受け入れる」などなど、考えてみたらシンプルな道徳かも知れないけど、今の世の中に埋もれてしまいやすいこと) と言う深い土台があります。

溢れんばかりの情報と、進化の速さから物事がどんどん便利になって望みが叶いやすい現代において、
『あなたが今見てるものは枝分かれした先の葉っぱの一枚に過ぎなくて、ものごとの根幹はまさにこれだよ』
って核心を気付かせてくれるようなそんな哲学ですが、私に影響を与えたのはその哲学の方だったのです。
ポーズはそれに気付きを得るプロセスなのですね。
きっと、心の状態が変わったからこそ短いスパンで身体にあれだけの変化を感じ取れたのだと思う。

先を目指して駆けて行くパワーも必ず必要だし大切。
でもスピードを落とさないと見えない景色もあります。
ヨガと出逢ってから、受け入れる・ゆだねると言うニュートラルな在り方を少しずつ実践できるようになって、
確かに生きやすくなった気がします。

ティーチャートレーニングにおいては解剖学はじめ心理学、生理学、病理学、栄養学などを学ばせていただきましたが、体ってもう、、本当に宇宙!
毎日からだと心について考えるけど、毎日疑問は尽きなくて、知るともっと深くて無尽蔵で、うまくできていて・・・  もはや体に関しては学ぶというより楽しむというスタンスです。

こう言う経験の積み重ねが何かの形になって誰かに届いたり、選択肢として提案できたとき、
それをきっかけにその誰かの絡まった糸が少し解けるような、そんな繋がりを持てたら素敵。
そしてそれってヨガそのものだなあとも思います。
サンスクリット語である「YOGA」の語源は「繋がる」なのです。

P1150468きっとおばあちゃんになってもヨガしてるだろうな。
私にとってヨガは哲学、生き方そのものでもあり、バレエの世界もキャンドルの世界も私にとっては全てがベースフィールド。同じように表現の場です。

バレエとは28年の付き合い。
ヨガとは10年を超える付き合いとなりますが、
まるで陰陽とも言える両方の世界を贅沢にも同時進行でき、本当にありがたいことです。
双方の良さを活かし合う関係性でこれからも楽しむ気持ち満々!

点と点が繋がって、線。
これまで繋がりを持って下さったすべての方々に感謝の気持ちでいっぱいです。
この気持ちは上手じゃなくても丁寧に未来に繋げたいと思っています。

わ。
こんなに長くなってしまいました。
ヨガヨガ書いてしまって、読んで下さっている方がゲシュタルト崩壊していないといいけど…

キャンドルのことは書ききれませんでしたが、同じように物語があり呼吸してます。
機会があったらまたその時に〜

Q2: 日々の暮らしについて
studio
事務所&アトリエ兼自宅と自身のスタジオを基点に日々を送っています。
他のお教室でレッスンさせて頂く機会も多いですが、仕事柄毎日沢山の方とお会いします。

スタジオでは身体を動かしながら同じ時間と空間、知識を皆で共有しますが、レッスンの中で私が言葉や動きで発したものを、皆さんが個々のパレットに受け止め、自分らしさを織り交ぜ、そして整え、またそれぞれの表現方法でアウトプットしてくれます。
そのコミュニケーションが実に鮮やかで毎日スケッチブックをめくっている様で楽しいのです。

たとえば踊る。
たとえば歌を歌う。
料理を作る。
部屋を飾る。
想いや印象を色や形にする。
指導をする。
レッスンを受ける。
会話をする。

どんな形であれ日々の営みは殆どが「表現」であり、
それがつまり対誰か、対何かに繋がる「コミュニケーション」となって、
巡っては「生きる事」なのだと思います。

枠にとらわれない色んな方法で、表現を楽しむ暮らしが出来たら素敵だな。

Q3: 将来のプロジェクトは?

『プロジェクト』ってすごくワクワクするワードですね。
yoga自分のフィールドであるスタジオを、年月と共に生きた空間として成長させたい。
本格的にお教室を構えてから運営や経営の楽しさを知り始めました。
素敵だと思えることを企画し、そこに集まってくださる方々と楽しいねって共有し合えた時にはなんとも言えない喜びを感じます。
そのために何が出来るか、どういう風にしようかと考えているとまた次の力が湧いてきます。
まだまだ勉強することは沢山あるけれど、ここに集まった人が笑顔になれる経営かどうかを基本に考えたいと常々思ってます。

たとえば空で自由に飛んでる鳥が、羽を休めたり雨風をしのいだりする大きな木の様なみんなにとっての「安心の場所」として成熟してゆけたら嬉しいです。

そしてプライベートでは、 日々是好日。
楽しむべきは楽しみ、楽しみ無きところもまた無きところを楽しむ。
こんな精神を一緒に分かち合ってくれる愛する人と、これからも並んで笑い合えていられれば、きっとただそれだけで最高。
何を持っているとか、どんな場所にいるかではなく、
私にとっての幸せはいつも、
肩越しや掌や足元 そう言う場所で見つかります。

Q4: 好きな本、映画、音楽

それぞれの作品と向き合う時の、そこに流れる時間感覚にどっぷり浸るのが好きです。

【本】
・パールバック 『大地』
・江戸川乱歩 『芋虫』
・山崎豊子 『沈まぬ太陽』
すべて見事にヘビーだけど。

吉本ばななさんの 『TUGUMI』 や 『うたかた』 のようにふわりと淡くて切ない感覚で浸れる作品も好き。

・安野光雅さん 『旅の絵本』
子どもの頃に集めていました。この絵本には文字はないけど夢があって物語が溢れています。
映画や小説などのスターシステムにわくわくする私にとってはこの作品はテーマパークのよう!大好き!

・『愛の笛』
大人になってから出会った絵本。大切にしている絵本です。短い物語の中にネイティヴアメリカンの精神がたっぷり詰まっていて、優しくどっしりしている。

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【映画】
つい最近観たのは黒澤監督の 『素晴らしき日曜日』
これまで私の中で一番強烈だった黒澤作品は 『夢』

内容が好きだったり、光りや雰囲気が好きだったり、俳優陣が好きだったりと、好きの角度も色々あるけれど、
『グランブルー』 『ライフ・イズ・ビューティフル』 『アニーホール』 『ギルバートグレイプ』 『BIG FISH』 『シンドラーのリスト』 『アイアンマン』 『影武者』
サントラで好きなのは 『リアリティバイツ』 『レザボアドッグス』 『ユーリ』

【音楽】
沢山ありすぎてなんと書けばよいか。
その中でも極めて頻繁に聴いている音楽は自分にとって心地いいし大切な音なのだと思います。
Sigur Rós,Philip Glass,Keith Jarrett,Brian Eno,Penguin Cafe Orchestra,L.M. Gottschalk,
radio head,Nirvana,Janis Ian,Janis Joplin,muse,Norah Jones,NOFX,
忌野清志郎,登坂亮太,高木正勝,斉藤和義…..
大好きだったり大切にしている音楽って、
匂いみたいに想い出と共に沢山あって、
数えきれなくて書ききれなくてもう考えるだけで切ない!

2015 / 5 / 22 UP

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